賢人の雑学:英語の違和感
[賢人の雑学]
佐藤弘樹の英語回帰 (2008.01.31)


先日、定年退職を機に一念発起、英語にチャレンジしている人から興味深い話を聞いた。これまでのサラリーマン生活では英語に縁のない仕事だったこともあってほぼ半世紀ぶりの英語にわくわくして勉強を始めたのだが、ほどなく「英語の違和感」を覚えるようになったと言う。外国語なのだから違和感があるのは当然だと思うのだが、彼が言うのは少し違う。大げさに言うと心の奥から「いい年をしてそんな口のきき方があるか」と嘆く声が聞こえるという。
教室で生徒同士がペアを組んで練習することがある。そんな時、例えば「あなたはこれが必要ですか」という例文があったとしよう。英語では Do you need this? となるが、ペアを組んだ若い学生の英語の台詞は「おっさん、これ要るか?」に聞こえて「失敬な奴だ」と怒り、同年輩の女性のそれは「あんた、これ要るの?」に聞こえ「馴れ馴れしい女だ」と不愉快になる。教師のは「これ、御入り用ですか」に聞こえ、今度は恐縮する。
いちいち日本語に訳すからそういうことになると自分自身に言い聞かせても どうしてもYOU が気になるという。 考えてみると、英語には話をしている相手を指す二人称は基本的にはこの YOU しかないため、相手が赤ん坊でも子供でも友達も先生も社長も大統領も全て同じ。
しかし、日本語は、あなた、あんた、君、おまえ、貴様、てめぇ、は言うまでもなく、普通名詞を二人称に転用して使う。先生、社長、お客さん、お嬢さん、お姉さん、奥さん、おばさん、おばちゃん、おじいちゃん、おじさん、ご主人、お兄さん、お坊ちゃん、学生さん、挙げていけばきりがない。これらを我々はTPOに合わせて見事に使い分けている。
そうした言葉の“きめ細やかさ”が英語には感じられず、自分が随分「ぞんざいな」言葉を使う「幼稚な人間」になったように思えて英語学習に急ブレーキがかかってしまったと言うのが目下の彼の最大の悩み。
ちなみに教室で、ある生徒の誕生日のお祝いに Happy Birthday to YOU を歌ったそうだが、フルコーラスを笑顔で歌うその偽善的無邪気さと面映さに耐えられなかったという。I LOVE N.Y.と書かれたTシャツが大好きな彼の悩みは尽きない。
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