賢人の雑学:日本人離れした…
[賢人の雑学]
佐藤弘樹の英語回帰 (2008.05.29)


彫が深くて鼻が高く、抜群のスタイルの人を我々はどう表現するだろう。あるいは、ある日本人の話す英語が外国語とは思えないほど流暢だったら、何と言ってその人の英語を評価するだろう。こういう時、我々の頭には「日本人離れした」という形容が浮かぶはず。
『日本人離れした顔立ち、容姿、英語力ですね』。そして、こう言われた人は一様に褒められたと感じ、「いやぁ、それほどでもぉ」などと言う。
この賞賛の意を込めた「日本人離れした」ほど、英語に訳しにくい言葉は珍しい。例えば『彼は日本人離れした英語を話す』を英訳しようとしてみると、「(我々日本人は英語が上手にできないのが普通なのだが、あぁ、それなのに)彼は英語を上手に話す」とでも意訳しなくてはならない。
「日本人離れした顔立ち」は「日本人の顔は、鼻はペチャンコでノッペリしているのが通り相場なのだが」、「日本人離れしたスタイル」は「日本人は胴長短足で見るも無残なほど滑稽なのだが」…だんだん訳す気もなくなってくる。
『日本人離れした考え方』は褒めているのか、貶しているのか。
『日本人離れした箸の使い方』や『日本人離れした味噌汁の味付け』が家庭に溢れ、『日本人離れしていて、何と驚くべきことに着物が自分一人で着られる』のが普通になった現代日本。将来は『日本人離れして、正しい敬語ができ、自己抑制のきいた人』や『日本人離れして、全てをお金に換算しないお金への執着心がない人』が登場しないとも限らない。日本人が日本人らしくないが故に優れているという表現を、何の疑問も感じずに使っていることがジャパニーズ・ミステリーの一つ。
ちなみに、褒め言葉のつもりでこうした表現を外国人に使えば、「どういう意味だ!」と相手は色をなして反論すること間違いない。
『あなたって、○○人離れして戦いを好まないし、無茶苦茶な自己主張をしないのね』。
『あなたって、××人離れしてきれい好きで、平気で騙したり嘘をついたりしないのね』。こう言われて「そうですかぁ、いやぁ、それほどでもぉ」とニコニコする○○人や××人がいたら会ってみたい。
「『日本人でスミマセン』を英語で言うなら、I'm sorry to be a Japanese.ですか」と真顔で質問する大学生に出会ったら、私はきっと気絶する。
バックナンバー
- [賢人の雑学] 佐藤弘樹の英語回帰 『化石になった言語たち』 (2008.07.11)
- [賢人の雑学] 佐藤弘樹の英語回帰 『日本人離れした…』 (2008.05.29)
- [賢人の雑学] 佐藤弘樹の英語回帰 『含み含まれ』 (2008.04.30)
- [賢人の雑学] 佐藤弘樹の英語回帰 『どうしてくれる!?』 (2008.03.29)
- [賢人の雑学] 佐藤弘樹の英語回帰 『英語の違和感』 (2008.01.31)



