賢人の雑学:化石になった言語たち
[賢人の雑学]
佐藤弘樹の英語回帰 (2008.07.11)


普段、使っている日本語の表現が若い人たちに通じなくなった時ほど自分の年齢を意識することはない。逆に彼らの言葉が「ちんぷんかんぷん」な時も、なんともいえない気分になる。
言葉は生き物だが、「言語の化石化」という言葉はあまり知られていない。昔々、日本語が片言の二十代の日系アメリカ人と英語の得意な日本人と私との3人で腕相撲をした時の話。2番目に強かった日系アメリカ人が会話の中で一番弱かった日本人に向って “I am a chujo and you are a shosho.”と言い出した。恐る恐る「それ、どういう意味?」と、聞いてみると、彼の答えは、
“Don't you know the Japanese ranking, taisho, chujo, and shosho? ”
つまりは「大将、中将、少将」で「1番、2番、3番」を意味しているらしい。ちなみに彼は軍事オタクではない。いったいそんな言葉をどこで覚えたの?と聞くと、ハワイでおじいさんがよく使っていたと言う。「日本語では、the greatest man(一番偉い人) はtaisho( 大将)、the second greatest(二番目に偉い人) はchujo(中将) そして the third(三番目) は shosho(少将) と言うのじゃよ」。
日本への憧憬を抱きはじめた少年だった彼の心にこの“日本語”は深く入り込んだらしい。自分の好きな大リーグのチームがワールドシリーズで優勝を逃すと、“Oh,chujo!”と使っていたと言うから言葉は恐ろしい。
この現象は現代でも起こりうる。日本語を勉強しにアメリカから女子高校生がやってきたとしよう。クラスメートとの会話は当然「当世女子高生風」にならざるを得ない。彼女がアメリカに帰って、「本場仕込み」の日本語を十数年後の披露する悲喜劇を想像してみてほしい。「つまらない」は学校で教わる正しい日本語だが口語では「チョーイケテネェ、ダッセェー」と言います。などと、この元女子高生は本気で言いかねない。言葉は洋服のTPOと同じで、無理に大人びた格好も、妙な若作りも似合わない。
バックナンバー
- [賢人の雑学] 佐藤弘樹の英語回帰 『化石になった言語たち』 (2008.07.11)
- [賢人の雑学] 佐藤弘樹の英語回帰 『日本人離れした…』 (2008.05.29)
- [賢人の雑学] 佐藤弘樹の英語回帰 『含み含まれ』 (2008.04.30)
- [賢人の雑学] 佐藤弘樹の英語回帰 『どうしてくれる!?』 (2008.03.29)
- [賢人の雑学] 佐藤弘樹の英語回帰 『英語の違和感』 (2008.01.31)



