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賢人の雑学:Hitlerと人類愛くん

[賢人の雑学]

佐藤弘樹の英語回帰

Hitlerと人類愛くん
佐藤弘樹の英語回帰
 

先日、絵に描いたような犬も食わない夫婦の痴話喧嘩を聞かされた。奥様の嘆きは次の通り。旦那は、まるで蒸気機関車のように煙を吐くヘビースモーカーで正体なく酔っ払う大酒呑み。このご時勢に自分の健康への関心はゼロ。芸術は分野を問わずオンチ。読書している姿は見たこともなく、クラシック音楽は5分が限度。経済学部出身なのに経済観念は未発達。見境のない女好きで、政治には全く関心がなく、成人して以来選挙に行ったこともない。意志が弱くて三日坊主と改名したほうがいいくらい。

「まぁ、好きになっちゃったんだからしょうがないじゃん」と慰めながらフト思った。彼の正反対の男っているのだろうか。つまり、酒も煙草もやらず健康に人一倍気を使って芸術とくれば自分で絵を描き、大の読書家。特に歴史学は専門家も舌を巻くほどの博識。クラシック音楽はワーグナーをこよなく愛し、お金にはそもそも執着心がなく、女性関係は清廉潔白。国を治めることを夢見て、鉄の意志を持って着々と計画を実行に移す。

そんな男が歴史上、一人いる。その名はアドルフ・ヒトラー。ほぼ全ての俗っぽい条件を満たしながら、決定的な「人類愛」や「隣人愛」という人間の必須条件が完全に欠落した男。

単純にヒトラーは狂人や異常者や破綻者であった、と断じるとわかりやすいのだが、しかし歴史はもっと残酷で奥深い。ちなみに手許のパソコンでHitlerと検索すると、1億2600万件ヒットする。これだけの分析を重ねてもなお、世界は「Hitlerとは何か」について、正解と言える解答をまだ見つけていない。悪魔は、元々は天使だったという。悪魔は普通の格好をして普通の人としてニコニコしてあなたの隣に座っているということか。

ロバート・N・プロクター著、宮崎尊訳の『健康帝国ナチス』(草思社2003年)を読むと、ナチス政権が強力に推し進めた禁煙運動、癌対策、アスベスト対策などに驚かされる。この話をしたところ奥様は旦那をなんと人間味溢れる人と見直し「人類愛くん」と呼ぶことにしたそうな。めでたし、めでたし。かな?

 

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