賢人の雑学:不気味の谷の向こうには
[賢人の雑学]
佐藤弘樹の英語回帰 (2010.03.10)


最近のロボット工学の発展は素人目にも凄まじいものがある。特にヒューマノイドと呼ばれる人間に似た形をしたロボットが近い将来に生身の人間と区別がつかなくなることはほぼ間違いない。
ロボットが人間に似ていると誰もが「凄〜い」と驚嘆の声を上げるが、あまりに似すぎると今度は人間がロボットに対して恐怖心を抱くようになるという。これを「不気味の谷」と言うそうだ。
これとよく似た現象が我々の毎日の生活でも起こっている。世に偉人・超人・達人と呼ばれる人間離れしたスーパーマンは多いが、それが「素敵」「凄い」「かっこいい」「やるぅ」「信じられない」という驚嘆のレベルを超えた時、我々はどんな言葉で彼らを評価しているだろうか。 驚嘆の賞賛に続くのは、「えっ?」という疑問であり、その後には「何これ?」「何この人?」「なんか変」「気持ち悪い」「不気味」「どっかおかしい」という違和感や不快感だろう。惜しみない賞賛はいつのまにか非難めいた物言いに変わる。
「モノには限度っちゅーものがある」のは善い事・悪い事を問わない。そんなことをツラツラ考えていたら、『アスペルガー症候群』(幻冬舎新書 岡田尊司著)という本に出会った。この本によればアメリカの統計では1996年から2007年で、アスペルガー症候群などの自閉症(=広汎性発達障害)の有病率が、大人も含めて10年間に7倍以上、年率2割を超えるペースで増え続けているという。そして著者は「ある意味、アスペルガー症候群が時代をリードし、動かしているといっても過言ではない」と断言する。“彼ら” の敏感すぎる神経や頑固一徹な気質が時としてまわりと摩擦を起こすものの、“彼ら” の突出した特異な能力が既成の概念を打ち破って次々と新しいものを生み出してきた。それにもかかわらず、現代社会は“彼ら” を必要としつつ“彼ら” を痛めつけてしまう面がある、と言う。
アスペルガー症候群 (Asperger’ s syndrome) は、それを最初に報告したオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーにちなんで名づけられたが、この傾向を持つ可能性をこの本で指摘されているのは、マイクロソフトの創立者ビル・ゲイツをはじめ、相対性理論のアインシュタイン、ノーベル文学賞のイエイツ、進化論のダーウィン、実存主義のキルケゴ−ル、天才ダ・ヴィンチ、映画監督ジョージ・ルーカス、国学者で医師の本居宣長、英国首相チャーチル、童話のアンデルセン、電話を発明したベル、ナチス独総統ヒトラー、建築家ガウディ、ディズニー映画のウォルト・ディズニー、映画監督ヒッチコック、画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホやユトリロ、インド独立の父ガンジーなど、挙げていけばきりがない。
ヒトラーを除く彼らの偉業には、狡さを知らない純粋さとナイーブなまでの不器用さに苦しんだ人生が見え隠れし、まさに凡人と天才は紙一重の例えを思い出す。
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