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賢人の雑学:聖域

[賢人の雑学]

佐藤弘樹の英語回帰

聖域
佐藤弘樹の英語回帰
 

「放送とは恥をかくことである」と言ったのは確か故筑紫哲也氏だったと思うが、生放送は何が起こるかわからない。先日、知る人ぞ知る美人女子アナの失敗談を人伝(ひとづて)に聞いた。

彼女の担当番組の『世界のバード・サンクチュアリー』という特集での出来事。「サンクチュアリーとは聖域のことですね」と可愛らしく言うところで、2つある「い」を一つ少なく言ってしまい、彼女は慌てて言い直したのだが、今度は2番目の「い」を「え」と言い間違えて、周りのスタッフからは「ひょっとして普段からそんな事ばかり考えているの」と疑いの目を向けられ、思わぬところで「聖なる」が「性なる」になったという話。

「聖域」という言葉には正反対の2つの意味がある。一つは「神聖な地域」の意味で、ホタルの聖域といえば人里離れた山深い小川の清流が目に浮かぶ。もう一つは「聖域なき構造改革」という時の「聖域」。こちらは何やら男たちのシルエットが蠢くドロドロした魑魅魍魎の世界。現代日本は前者の聖域が減る一方で、後者の聖域は根深く社会に根を張っている。

新潮社からその名もズバリ『日本の聖域 The sanctuary ofJapan』という本が出版されたのは、今年の4月下旬。本の帯には“病理はそこにあった!この国の中枢を担う組織や制度のアンタッチャブルを白日の下に晒す”とある。

この本は「第一部 欲望が生み出す闇」「第二部 とがめる者なき無為無策」「第三部 国民への背信行為は続く」の三部構成になっており、目次には連日新聞紙上を賑わす有名な固有名詞が続々と登場する。

我々庶民はその鋭敏な生活者直感から、建前の裏の陰を感じているが、そのいずれにおいても絶対的な証拠はない。その一方で「そうであって欲しくない・そんなことが許されるはずがない」という一縷の望みも託している。その靄のかかったような複雑な庶民感覚を覚醒させる一冊と言っても過言ではないだろう。

巷間、世界で一番幸せなのは「ピョンヤン市民」だという。世界の情勢に触れないように情報を徹底的に管理・隠蔽し、耳当たりのいい話しか聞かされない市民は、さぞ幸せだろうが、それはある意味で「野生動物の聖域」に近い。

因みにこの本『日本の聖域』の新聞広告が出された出版直後に、多くの書店に足を運んだが、店内の検索機ではヒットするものの店頭に本が並んでいる店はなかった。「知らぬが仏」か「一葉(いちよう)落ちて天下の秋を知る」、はたまた「知らざるを知らずとせよ」か。

 

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