賢人の雑学:「強い木」の話
[賢人の雑学]
中村義明の一棟梁談 (2007.06.24)

情報や経済関係が地球規模で身近になり、個々の国々は各々自国を表現するようになった。文化は我々人間の個々の存在を表現する手段であり、我々のルーツやDNAを表すものであると信じている。
日本人にとっては「和」であり、「衣」「食」「住」にもそれぞれ表現されている。「衣」では洋服という西欧の機能的服装を、世界的な日本のデザイナーは多くの日本的古典手法にて表現している。「食」では、世界規模で「日本食」を広めている。「住」についても、最近の日本人の洋風化にも係わらず、「和風」というデザインコンセプトが多くの建築で表現されているのである。そのほとんどは、「木」を建築の素材として使用している。
最近の建築空間の洋風化は、目線の高さの変化を生み、使用勝手の変化は、建築に使われる素材の変化をもたらしている。木材素材においても「強い木」「硬い木」が多く使われ、国産材では欅やナラ・桜などの広葉樹材、洋材ではアフリカの硬材であるイペやブビンガ、ウォールナット等が使われている。『万葉集』にある「つき(槻)」といわれた欅の木は、強木と尊ばれ、古くから日本建築に使われている。欅は北海道を除いて全国的に自然分布し、木理が明瞭で美しく、強度が大きく耐久性もあり、優れた木材として建築構造材・装飾用木材と広い分野で使われている。一般的に平地に植栽されたものより山深い天然木の方が良質材とされ、山欅、里欅と区別されている。アフリカ材等と比べると加工しやすく、良材においては細かな彫刻や建具等にも使用できるのだ。
「和」を洋材で表現しようとすると、素材そのものを日本の風土に合わすことが経年変化の中では甚だ難しく、技術的にも限界を感じる。我々職人としても、日本的美感である清潔感等表現しえない素材で、今後如何に洋材を扱うかは大変重要である。強い木、硬材は乾いた表情を醸し出し、日本の心である濡れ色の世界を創り出せないことも今後の課題だと思う。
筆者プロフィール

[中村外二工務店代表] 中村義明さん
数奇屋建築の名匠、故中村外二の次男。菊乃井本店、俵屋、MIHO美術館造園など、全国の伝統建築・改修工事に多数従事。
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