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賢人の雑学:東京芸大講演会

[賢人の雑学]

中村義明の一棟梁談

東京芸大講演会
中村義明の一棟梁談
 

先日、東京芸大の北川原先生に頼まれ、学生達への講演会を開いた。北川原先生とは一度仕事をしたが、東京芸大は私の建築人生にとって一番重要な建築家である故・吉村順三先生の学校でもあった。吉村先生は、私が仕事に従事する前から我々の工務店と多くの作品を創り、私が26歳の若輩の時に先生のロックフェラー邸新築工事の担当をさせていただき、仕事を通して多くのことを学ばせていただいた。

講演会では「和の建築」、「建築の機能と美」、「材料学」について、現場からの声として体験や多くのエピソードを話した。吉村先生との逸話で、現場で構造が上手く納まらない時に先生は、「隠そう、隠そうと思うな。その所をデザインせよ」とおっしゃった。この言葉はその後30年以上、私の建築論に大きく影響する。適当な素材や予算がない時、色んな不都合が生じた時は、逆に楽しんで諸々の問題を解決し、納めていくことが出来たのも先生の一言のおかげである。吉村先生もよく変更や現場でのやり直しなどもあったが、楽しく仕事させて頂いたのは先生の知識、能力、美的感覚が素晴らしかったからだ。

講演会では「本物を知る」重要性についても話した。伝統と創造は物の表裏であるが、創造は伝統の方向性を変える表現で創り出せる。伝統はものの機能、経験を教えてくれ、素材の有効性、実用性も教示してくれる。伝統を形だけで継続するのは問題だが、その伝統の成立過程や条件を知ることが必要なのだ。東京芸大講演会色んな素材を手に触れ、五感で触れてその人なりの使い方を発見すれば一つの創造になる。大御所の建築家の建築手法として「原寸で考える」「現場で考える」がある。吉田先生も格子や建具、各々の建築の寸法を決定するにあたり、原寸模型を現場に作られている。現代の建築家は机上で決定し、素材そのものをあまり知ろうとせず、あまり現場にも立ち寄らない。時折、当店の事務所にある吉村先生の多くの原寸図を見て、建築家の楽しみや苦しみを感じている。

筆者プロフィール

中村義明さん

[中村外二工務店代表] 中村義明さん

1946年、京都生まれ。
数奇屋建築の名匠、故中村外二の次男。菊乃井本店、俵屋、MIHO美術館造園など、全国の伝統建築・改修工事に多数従事。

 

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