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賢人の雑学:京の「山紫水明」

[賢人の雑学]

中村義明の一棟梁談

京の「山紫水明」
中村義明の一棟梁談
 

私は京都の北、紫野で生まれて60年間、この地に住まいを構えている。京都は多くの人々から憧れられるが、京都の良さを楽しもうとするとお金がかかる。京料理、京の工芸品、西陣織の着物など高級品ばかりで、庶民が楽しむようにできていないと思われる。京料理においては、新鮮な素材である鯛など明石から朝獲りの魚が運ばれ、その手間や経費を考えると高くなる。工芸品においても、昔からの工程で、宝でも作るように修練された職人によって吟味される素材で製作される。職人はいつも昔の最高の作品や商品に囲まれて比較され、厳しい客の目に晒される。作品の経年変化や使われ方まで考えて作られるために、そのもの自体高価になるのだ。

京の「山紫水明」
その中にあって景色だけは例外で、これは誰が眺めてもただである。京都の山紫水明は町の中から賀茂川を見たり、賀茂川の堤から東山や北山、西山を眺められる。北大路橋からの東山の山並みに続く比叡山は美しい。一方、東山から洛中を見ると日本の美しい風景を見ることができる。

私の住んでいる紫野にある大徳寺は、京都の北側に位置し、京都の戦後とされる応仁の乱以後、「天子南面に立つ」という中国皇城の考えからすると、京都の一番の位の場所にある。徳川幕府以来、大徳寺は他の禅宗、将軍派の五山に対して、山林派と称し天皇派である。桃山、江戸初期の全国の大名の寺院や庵が多く、寺宝も多い。寺内は勅使門、山門、仏殿、法堂、方丈庫裏が一直線に建ち並び、方丈には探幽筆の四季山水の襖絵、遠州作の庭園がある。境内には真珠庵をはじめとする塔頭がある。現在では24の塔頭があり、それらの門を見るだけでも意義がある。一休の真珠庵の門は、天皇の子である一休の気品があり、織田信長の総見院は、その檀越である秀吉そのものである。弧蓬庵には遠州の工夫が見られる。建物の入口である門だけでも多くを知ることができ、見料も無料である。京都を理解したり、日本の文化を知ることも、ただでもできるのである。

筆者プロフィール

中村義明さん

[中村外二工務店代表] 中村義明さん

1946年、京都生まれ。
数奇屋建築の名匠、故中村外二の次男。菊乃井本店、俵屋、MIHO美術館造園など、全国の伝統建築・改修工事に多数従事。

 

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