賢人の雑学:デンマーク家具と私パートII
[賢人の雑学]
中村義明の一棟梁談 (2008.03.29)


前回の話、デンマーク家具について、もう少し考察しよう。ヨーロッパでも途上国といわれる北欧は、ゴテゴテ装飾で飾る文化が発達せず、質素で派手さがない。自然に対する人間の関わり方が、自然が厳しいゆえに謙虚にならざるを得ない。そのあたりがデザインに共通性となって現れている。実際、デンマーク家具のダイニングチェアは安いものでも一脚10万円ほどで、国産に比べれば高いのだが、使ってみると全然違う。飽きがこないし絶対に壊れない。そして、軽いしお尻が蒸れない。例えばソファーでいうと、革はもちろん、クッションが比べものにならないのだ。なんとか同じ物を日本で作れないかと思い、何度試してもかなわず、少し高価だけれどもデンマークから取り寄せざるを得ない。
ウェグナー、モーゲンセンは、大衆的で誰でも使える家具をデザインしている。森のないデンマークで木の家具を製作している家具デザイナーや職人たちは、素材である木材を大変大事に使っている。徹底して無駄を慎んで製作する。ハンス・ウェグナーの椅子の脚が先細りになっているのは、美しさはもちろん、キャンティレバーで構造的に不要なのだ。デンマーク家具の父と呼ばれるコーア・クリントの椅子は気品に満ち、私の大好きなフィン・ユールは大人の色気さえ感じる。家具は居間の雰囲気をガラリと変えるだけでなく、変な椅子に座ったら体も疲れ、会話も楽しくない。家具を建築の一部として考えないと、上手くいかないのだ。
家具がしっかり見直されないと、本当の暮らしが良くならないと私は考える。家具のもっとも大きな特徴とは、体が触れることだ。体に触れるものは、良し悪しを見た目以上に体で感じる。お尻が痛くなったり、背中が痛くなったり、触覚はもちろん、筋肉にも訴えてくる。もともと日本家屋は、常に触れる対象が畳だった。畳がベッド・椅子・テーブルであったということだ。ただ残念なことに畳を使いこなせない時代になってきて、代わりに洋間と家具がある。同じ予算であるならば、建物を削ってでも良い家具を買ってくださいと、今では建主に話す。椅子を買い求める場合は、何度も座って感じること、それが大事である。
筆者プロフィール

[中村外二工務店代表] 中村義明さん
数奇屋建築の名匠、故中村外二の次男。菊乃井本店、俵屋、MIHO美術館造園など、全国の伝統建築・改修工事に多数従事。
バックナンバー
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