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賢人の雑学:和の建物

[賢人の雑学]

中村義明の一棟梁談

和の建物
中村義明の一棟梁談
 

35年前、故吉村順三先生設計のニューヨーク・ロックフェラー邸を施工させていただいた。延400坪の建物で2階部分の住居を施工した。この建物は、当地ではジャパニーズハウスと呼ばれている。吉村先生は、柱や桁など構造材でもある仕上げ材や天井材・床材、各所の棚や内うちのり法造作材は全て日本の木材を使用し、真壁構造の建物である。居間やファミリールームの天井は赤杉、中杢板・床材は赤松で、造作材は赤杉・赤松である。寝室は、枠から壁板まで同一の塩地材で、書斎は全て赤松材で覆われている。そして、ダイニングルームはクルミ材の横板張り。素材が醸し出す空間が、各々の室内を創り出している。この手法は、日本の建築材料の使い方に類似する。「松の間」や「杉の間」、「竹の間」などの呼称の部屋が素材から決定されていことは、旅館などで理解できる。

木材の種類に格というものが伝統の中で存在する。それは、素材の貨幣価値だけでなく、素材の硬さや柔らかさというような、素材が人間の五感に放出する要素からだと信ずる。建築家やデザイナーが素材と取り組み、形や大きさだけでなく、素材が醸し出す質量を造形するのである。同じ素材でも木目が細かければ細く軽く見え、太ければ太く重く見える。そのことは空間の品格すら決定するのである。 木目のおとなしい中杢板は女性的であり、杢板の笹杢などは男性的である。本来、人間の欲は多様であるが、寝室などの天井板は、おとなしい柾板や中杢で施工され安眠を演出する。27歳の私には、ニューヨークの現場施工中は吉村先生の素材の決定の主旨が理解できず、ただ図面通り施工していたが、60歳過ぎて初めて理解できた。障子が使われ、畳が敷かれれば和風と呼ばれる空間と思われるが、吉村先生のポカンティコの家は、畳が全くない。洋式使いの機能であり、ジョージ・ナカジマ氏の 椅子やテーブルが置かれている。

私の次回の仕事は、アメリカ人の京都の家を施工する。建築主の要望は「和風の家」。純和風も食堂や寝室は洋式使いである。建築家と歴史に残る和の空間を創りたいものである。

筆者プロフィール

中村義明さん

[中村外二工務店代表] 中村義明さん

1946年、京都生まれ。
数奇屋建築の名匠、故中村外二の次男。菊乃井本店、俵屋、MIHO美術館造園など、全国の伝統建築・改修工事に多数従事。

 

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