賢人の雑学:江戸の色彩
[賢人の雑学]
中村義明の一棟梁談 (2010.02.10)


羽田国際空港ターミナルの工事も年内に鉄骨造組み立てや外構、大屋根の工事もほぼ完了し、来年からは内部の仕上げが始まる。私共の工務店の、4階江戸小路の仕上げ材の準備も年内に完了する予定で、1月中旬から現場入りの段階である。
江戸小路の建物を飾る装飾品も、これから準備される。暖簾や提灯、店名看板、メニュー板、路地行灯、店名櫓(やぐら)など多種用意するのである。空港ターミナルの物販と食堂街を江戸の街として演出するのだが、あくまで現代の日本家屋の街であり、創造の街作りである。中村座の歌舞伎小屋が物販の店となり、蔵や純木造の日本建築が立ち並ぶ。現代建築の鉄骨とアメリカの建築家、シーザー・ペリー氏が設計したガラスの建物の内部に4000平米の和風の空間が在る。庭部分と塀部分が現代建築と和の空間を結ぶ。その庭の部分に2本の大櫓を作り、一つの目印を設置する。大櫓を如何にデザインするかを染色家吉岡幸雄氏と演出している。絹の布地を天然素材で染色し、江戸を表す。江戸そして東京を表わす色彩とは、どのようなものが海外の人々に楽しんでもらえるのか考える。
江戸時代、元禄を過ぎた頃から幕府の禁止令に背くことなく粋なお洒落として縞や格子、小紋などが着物に使われた。特に紅、紫、金糸銀糸総鹿の子などの衣装が禁じられ、四十八茶・百鼠という茶色四十八、薄墨から墨色百の色彩が現れるのである。町民の間では、「裏優(うらまさ)り」という着物の裏地に鮮やかな紅もみ絹や描絵、舶来の裂地まで使われた。見えない所に意匠を凝らしているのである。
私の大好きな下保昭画伯は晩年、墨に打ち込んだ。「墨に五彩あり」という中国の言葉を先生の絵に感ずる。赤い炎から出る煙で燋を作り、その顔料で墨が生まれる。茶色も樹木の幹、そして土の色など自然界の中に多く見られる。吉岡氏に教えられたことは、茶という言葉は鎌倉以降で飲むお茶の色から発生したという。羽田のシンボルとして今後、この四十八茶・百鼠の色彩を基調として演出しようと思う。
筆者プロフィール

[中村外二工務店代表] 中村義明さん
数奇屋建築の名匠、故中村外二の次男。菊乃井本店、俵屋、MIHO美術館造園など、全国の伝統建築・改修工事に多数従事。
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