賢人の雑学:私のお茶
[賢人の雑学]
中村義明の一棟梁談 (2010.04.12)


この2月、今日庵・茶道裏千家淡交会より「第八回茶道文化振興賞」を受賞した。国内外で数多くの茶室建築に携わり「用と美の調和」を建築に生かし、時代に適応した茶室空間を施工した等が受賞理由であった。
私にとって茶道との関わりは、高校3年生の時、大徳寺芳春院の和尚に半ば強制的に井口海仙宗匠の稽古場に連れて行かれたことが始まりだった。家業の基でもある茶道を学ぶことの大事さを教示され、井口海仙宗匠の門下に入門した。海仙宗匠は、裏千家第十三世千宗室の三男であり、門下には京都の老舗の子供達がたくさん入門していた。茶道の稽古は、彼らの家業を継承する修行でもあり、稽古場は異業種の集団で私自身、茶道の稽古を通して新しい多くの経験に出会った。私の人生は建築を創ることで、建築は器であり器の上の「用」を知る上で茶道での経験は大いに役に立った。茶道の稽古は、毎回何かに出合える。今日の若い人達のように知識を知るのでなく、感ずる場所だった。茶道を書籍の知識で知るのではなく、体得する面白さを海仙門下で学んだのだ。
ある茶会での出来事を思い出す。20歳代の頃、点前は狂言の茂山千五郎氏で、私が半東でお茶の点前が進み、点前の順序の中で水指の蓋を茂山氏が開けなかった時、正客が「水指の蓋」と教示するような言葉を発せられた。点前が終わって水屋で海仙宗匠にご挨拶した時に、「客の心得」を教示された。「点前の間違いを客が指摘をしてはいけない。お茶をいただき、そのことに感謝するのです」。ものの道理をお教えいただいた。このことは、人生において学ぶことを急いではいけない。一つひとつ体験し、自分自身で感じ、本質を体感することが大事であることを学んだ。点前一つひとつは、不完全でも心を感ずるのである。
建築においても学問上の知識は、私にとって値札のついた商品の羅列である。良い建築空間は、いかに良い材料を使っていてもその材料が見えない空間であるべきである。この考え方も茶道の稽古から学んだ。私自身まだまだ半人前であり、受賞を機にもう一度、海仙宗匠の茶の道を思い出し、多くの友との出会いを感謝したい。
筆者プロフィール

[中村外二工務店代表] 中村義明さん
数奇屋建築の名匠、故中村外二の次男。菊乃井本店、俵屋、MIHO美術館造園など、全国の伝統建築・改修工事に多数従事。
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