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賢人の雑学:暖簾

[賢人の雑学]

中村義明の一棟梁談

暖簾
中村義明の一棟梁談
 

羽田国際ターミナルの江戸小路の演出も終盤を迎え、各店舗の街並みも建築物としては、ほとんど施工を完了した。そして屋根上看板や店名入り照明、暖簾などの取り付けが始まった。

暖簾は店舗の結界であり、その店の歴史でもある。暖簾は京都に圧倒的に多く残っている老舗の権威の象徴でもあり、美しく優雅で時として力強く入口を飾る。一方、そこをくぐった多くの人の汗や脂でボロボロになった暖簾の存在も美しい。麻や木綿、絹などで染めぬかれた簡潔な造形に、屋号や商う商品名の文字、そして家紋や屋号の絵柄など多種が見られる。

今回、空港ターミナルにおいても各店舗から提出された暖簾のデザインや色彩を見ると、その店の思想やデザイナーの意図が感じられる。屋根上看板や照明看板と同様に、暖簾は店とお客の一番目の接点である。昔、顧客とお昼御飯の店を探している時、暖簾や店外にあるメニュー看板で入店するか否かを判断した思い出がある。暖簾は割烹店やうどん屋、蕎麦屋、上菓子屋に餅屋等、店の中で売られている品物を連想させるのである。例えば上菓子屋はキリッと緊張感のある暖簾で、白地に黒文字や黒地に白抜き文字。少し洒落た菓子屋では藍染めや柿色染めの裂地が使われている。また、老舗の暖簾文字も高僧や著名人によって書かれたものが多い。一般商家に付ける暖簾の水引幕は、元々塵除け暖簾から始まったそうである。その他に暖簾には半暖簾、長暖簾、日除け暖簾、風除け暖簾や座敷暖簾等がある。使用目的に合わせて作られ、看板代わりであったり、錦絵の描かれた間仕切りの建具代わりであったりする。暖簾の染色には決定的な定式はないが、江戸時代の一時は、紫色は禁色であった。「狂歌三都名所図」によると「吉原」についての句がある。「紫の江戸のうちでもここばかり ゆるしの色のよし原の里」。

この10月末にはお披露目される江戸小路が多くの人々に暖簾も含めて楽しんでいただけるようにと念ずると共に、羽田国際空港ターミナルとして多くの外国の来訪者に江戸情緒の活気溢れる雰囲気を味わっていただきたいものだ。

筆者プロフィール

中村義明さん

[中村外二工務店代表] 中村義明さん

1946年、京都生まれ。
数奇屋建築の名匠、故中村外二の次男。菊乃井本店、俵屋、MIHO美術館造園など、全国の伝統建築・改修工事に多数従事。

 

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