賢人の雑学:サギの湯
[賢人の雑学]
井村日登美の日々宿日 (2008.02.29)


2007年の文字は「偽」。まったく偽装の年であった。食肉にはじまり、菓子、餅など食品が多かった。フードコンサルティングの女性は「マクドナルドのように時間を決めて捨てなきゃダメなのよ」と言いきっていたけど、そのマクドナルドもそうだった。いったい何を信じていいのやら。ところがこの「偽」=「ぎ」はこれだけではなかった。詐欺の「欺」=「ぎ」もあったのだ。
知り合いに超セレブなご夫婦がいる。年商11億円の飲食チェーンを経営しており、自宅なんざタクシーの運転手が公民館と間違えるぐらいの大邸宅である。齢50歳だって。格差社会をヒシヒシと感じてしまう。
そのご夫婦が銀婚式を迎えたとのことで、温泉旅行を計画。インターネットなどを駆使し、評判の良い超有名旅館を2軒選んだ。いずれも1泊2食付き1人3万5000円はする。旅館にちょっと詳しい人なら「そりゃ、すごい。よく予約が入ったね」と言われるだろう人気旅館である。 「それがね…」と、奥さま。「あんなとこ…」と旦那さま。で、奥さまが興奮気味にしゃべり始めた。「あのさ、一般的に天ぷらには塩か、天つゆが付くよね」「ところがご親切に最初から天つゆに入っているのよ、エビが…」。鍋物で生きたエビを使う時、勢いよくエビが飛び出すケースのごとく、自ら天つゆに飛び込んだのか。いや天ぷらになったエビが飛び出すはずもない。
自らも飲食店を経営しているご夫婦である。料理を美味しく食べさせるためには日夜研究している。他の店を見る目も厳しい。しかしこの場合、厳しい目でなくとも、普通の目でも、まずいとわかろう。結局、この日、タクシーで近くの居酒屋に行ったとのこと。
奥さまは言う。「詐欺よ、これは立派な詐欺。そういや宿の名前にも“さぎ”とついていたなあ」。偽装もまずいが、詐欺もまずい。考えてみれば、偽装は知らなければ満足している場合もある。一方、詐欺は不満足のかたまりだ。ならば、偽装の方が罪は軽い?(最後に言っておきますが、2軒目の旅館については大絶賛。正直な旅館が得をするのですね、やはり)
筆者プロフィール

[ホスピタリティ研究所「エイチ・ワン」代表] 井村日登美さん
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