賢人の雑学:旅館のカレーライス
[賢人の雑学]
井村日登美の日々宿日 (2008.05.29)


先日、仕事で兵庫県の旅館に行った。ニューコンセプトルームと露天風呂を新しく作ったとかで、楽しみだった旅館だ。最近の施設は斬新だし、お洒落だし、センスもいい。時に外観が古びていようが、看板の文字が消えていようが、改装した場所だけは輝いている。その落差が旅館の前向きな姿勢に感じられて、応援したくなる。
その旅館もそうだった。決してきれいとは言えない外観。中に入れば、お世辞にもモダンとは言えないロビーラウンジ。ホテルの昼間の時間帯とは違い、お客も従業員の姿もなく、照明も落としている。夕方のチェックインまで静かな時間が流れていく。典型的な、旅館の日常的な光景である。
リニューアルした客室は海を一望できる大きな窓を正面に、一段高い床の上に畳が敷かれ、ベッドがある。最近流行の和モダンのデザイン。デザイナーは店舗デザインが本業だという。そういえば、流行の店とよく似たところがある。一見本物に見えて、実は違う。コストを低減して、立派に見せている。うまい。
次に貸し切り風呂。これがまたすごい。2階建てぐらいの高さに風呂を作ったのだ。なぜか? 前に植木があり、海の景色が見えないから。シンプルにものごとを解決しているわけだ。こういう正直なところが旅館にはある。
仕事が終わり、遅い昼食をいただいた。旅館の特製カレーライスの大盛りである。あれだけ料理には気を遣い、夏はハモ、冬はフグと言っていたのに…。それが人気となり、集客していると言っていたのに。カレーライス、である。女将が言う。「ごめんなさいね。旅館なのにカレーライスしかなくて…」。レストランでは夕食の準備が始まっていた。でも、旅館のそんなところが好きだなあ。時々生活感が見えるところが。旅館で味わう家庭の味。そんな経験は滅多とない。
筆者プロフィール

[ホスピタリティ研究所「エイチ・ワン」代表] 井村日登美さん
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