賢人の雑学:120歳のホテル
[賢人の雑学]
井村日登美の日々宿日 (2009.12.11)


日本を代表するホテルの1つである『帝国ホテル』。明治維新後、欧化政策の一環として政府と財界が創り上げたホテルである。その帝国ホテルが来年の11月3日、開業120年を迎える。
その歴史は我が国のホテル業界の歴史でもある。ホテルは元々欧米からの輸入品のようなもので、欧米の人々を意識して創られてきた。憧れこそ持てど、格好よく振る舞える日本人は少なかった。選ばれし人だけが利用できるのがホテルだったのである。そこにホテルの品格があったと思う。近年誕生したホテルに、品格がないというわけではないが、ロビーに立った時に凛とした空気を感じるのはやはり帝国ホテル。世界からの賓客をもてなすホテルだけが漂わす厳粛な香りとでも言おうか。一種の緊張感とともに身がシャキッとなるようで大好きな空間である。
ここ数年、外資系のラグジュアリーホテルが「これこそ最高のサービス」と言わんばかりに幅を利かせている。絵になる、話になるサービス事例が多い。だからこそ、口コミで伝わる。1度も利用したことのない人まで「○○ホテルは最高よ」とのたまう。それはそれで、そのラグジュアリーホテルのマーケティングの凄さだと思う。
しかし、120歳のホテルの凄さは少し違う。そこには歴史とともに培われてきた「日本人らしさ」がある。最近ブームになっている戦国武将の話というわけではないが、雪が降り寒い冬のある日、木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)が織田信長の草履を懐に入れて温めていたという話がある。120歳のホテルもしかりで、ドアマンの内ポケットにはいつも1万円を両替したものが用意されている。タクシーで来るお客のためにだ。
また「○○へ行きたいのだが、どうしていったらいい?」と尋ねると、「タクシーが一番早いです。しかし今の時間だと道路が混んでいるので地下鉄の方がよろしいでしょう」とアドバイスしてくれる。「つくす」という言葉がぴったりの「もてなし」である。ホテルはどのように考えているのかわからないが、個人的にはそう思う。
今秋から2011年春まで開業120周年を記念し、さまざまな企画が打ち出される。そのなかで最も帝国ホテルらしさを感じとることができるのは婚礼商品である。その名も「IMPERIAL WEDDING(インペリアル ウエディング)」。コンセプトは「FormalisRomantic(フ ォーマルイズ ロマンチック)」である。世界の賓客を迎えてきた同ホテルらしいコンセプトではないか。
筆者プロフィール

[ホスピタリティ研究所「エイチ・ワン」代表] 井村日登美さん
バックナンバー
- [賢人の雑学] 井村日登美の日々宿日 『お気をつけて! 「地デジ対応テレビ」様』 (2010.07.09)
- [賢人の雑学] 井村日登美の日々宿日 『天空のホテル』 (2010.07.09)
- [賢人の雑学] 井村日登美の日々宿日 『1泊で10泊、10泊で1泊のホテル』 (2010.05.11)
- [賢人の雑学] 井村日登美の日々宿日 『カードとキャッシュ』 (2010.05.11)
- [賢人の雑学] 井村日登美の日々宿日 『スリリングな金庫』 (2010.03.10)



