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賢人の雑学:至福の時間

[賢人の雑学]

井村日登美の日々宿日

至福の時間
井村日登美の日々宿日
 

「1人会席」「1人コース」…。旅館やホテルの取材先でよくあることだ。先方はもてなしのつもりなのだが、1人で皿数の多い料理はどうも間がもたないし、美味しく感じられない。食事は1人より多人数で食べる方が楽しい。そう思っていた。そう信じていた。

ところが、その考え方はちょっと違うのではないか。本当に美味い料理なら料理と自分だけで楽しめることに気がついたのである。

先般、神戸市・ポートアイランドにある神戸ポートピアホテルの31階にあるフレンチレストラン「アラン・シャペル」で食事の機会を得た。ご存じ、フランスの二ツ星レストランである。春と秋の年2回フランス・リヨンの本店からシェフがやってきて「アラン・シャペルの料理を楽しむ会」を開催しており、首尾良くそれに滑り込めたのである。

今回で41回目。毎回、ランチもディナーもアラン・シャペルのファンで満席になるという。4日間の開催期間のうち2日予約するファンや、泊まりがけというのも少なくないといい、その変わらぬ人気ぶりにただただ驚くばかり。食へのあくなき欲望を感じる。

でもね、1度食べてみると、さもありなんと思う。口の中に広がるジュレのさわやかさ、しっかりと煮込まれて溶けそうなほど柔らかい牛ホホ肉、生野菜にチーズだけのサラダにしても、チーズの塩味が適度に効いてさっぱりとした味わいを楽しめた。

料理は全8皿。次々に出てくるのを次々に食べ、スッスッと胃のなかに入っていく。食べた順に胃に貯まるのではなく、まるで胃の中が料理別に分かれていて、それぞれが自分の定位置に入っていくという感じなのだ。そして、それらがどんなに美味かったか。メンバーは8人いたのだが、誰も食べるのに一生懸命でほとんど会話らしき会話をしなかった。12時から食べ始め、気がついたら午後2時過ぎという熱中度。みんな夢中で食べ続け、料理との会話を楽しんでいたのである。それに気がついた時、驚いた。こんな楽しみ方があったのか。これこそ正真正銘の美味い料理ではないかと。

神戸の料理長は佐々木康二さん。「2009年ボキューズ・ドール国際料理コンクール」で世界8位入賞と、世界で証明されている氏の腕前を楽しむチャンスがある。アラン・シャペルオリジナル企画「ル・クラブ」では、毎回異なるテーマにそったお料理が楽しめて、1人1万2000円。次回は2010年1月29日と2月26日。至福の時間を楽しもう!

筆者プロフィール

井村日登美さん

[ホスピタリティ研究所「エイチ・ワン」代表] 井村日登美さん

ホテルのサービス研究をテーマに、国内外数百軒のホテルを泊まり歩く。ホテルや旅館向けのコーディネート、講演会、専門誌への執筆活動などで活躍。

 

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