賢人の雑学:スリリングな金庫
[賢人の雑学]
井村日登美の日々宿日 (2010.03.10)


ホテルや旅館でもっとも基本的なことは何か。「清潔なこと」はもちろんだが、それ以上に「安全」なことではないだろうか。随分前、イタリアを訪れた時、朝、何か物音がするので起きてみると、そこに年輩の女性が立っていた。目が合い、お互いにギャー!
後でわかったことだが、彼女はお部屋のお掃除のオバサン。チェックアウトした部屋と間違え、ノックをせずに勝手に鍵を開けて入ってきたらしいのだ。不審者ではないものの、その時の驚きは心臓が止まるほどだった。
とにかく安全であることは安心すること。安心することは心身のリラックスを意味する。だからこそ安全は必要なのだ。そのためのサービスの1つが金庫である。もともと貴重品の類はフロントが預かっていた。それがコトあるごとにフロントに行くのを不便に思うお客と、コトがあったら責任をとらされるホテルの気持ちが合致。客室に金庫が登場してきたのである。
今ではセーフティボックスといって、アタッシュケースがそのまま入る大きさのものや、ノートパソコンや携帯電話などを入れたまま充電できる機能を備えたタイプなどがある。また、旅館では4つに区分され、それぞれに鍵がかかるタイプが主流だ。安全、安心を提供する金庫。ところが…。
先日、格安の旅館に宿泊した。1度は利用したいと思いつつ、あまりにも安いので行きそびれていたところだ。たまさかヘビーユーザーの友人の誘いで行くことになり、念願が叶ったわけ。
ロビーに浴衣の棚があり、自分で選び持っていく。部屋までは段差と階段の連続。大浴場は湯気で真っ白。視界はほぼゼロ。外に露天風呂があるのだが、湯気で何も見えず。本当に露天であったのかなかったのか、今でもミステリー。食事は夕食、朝食ともブッフェ。刺身や天ぷらなど、旅館料理の定番メニューをきちんと押さえ、朝食には洋食メニューを揃え、コーヒーが飲めるなど、十分満足行く内容であったし、なにもかもが新鮮であった。
極めつけが金庫だった。例の4つに区分されたタイプだ。床の間に備えてあった。財布を入れて鍵をかけようとガチャガチャしていたら金庫が動いたのだ。よし、抱えてみよう!金庫を持ち上げたら、持ち上がったのだ。すぐに財布をとり出した。「預けた方が危ない」…。金庫だからといって信用するな!世の中、そう甘くない、と安宿は教えてくれた。
筆者プロフィール

[ホスピタリティ研究所「エイチ・ワン」代表] 井村日登美さん
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