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賢人の雑学:アマチュア大国日本

[賢人の雑学]

中 博の複眼涼視

アマチュア大国日本
中 博の複眼涼視
 

石川遼君がマナーを知らないギャラリーの心ない写メのシャッター音に狂わされ、日本オープンを取り逃がしたのは10月18日だった。その前日私は年甲斐もなく埼玉アリーナに出かけていた。大好きなビヨンセのライブだ。素晴らしいの一言、まさに日本では見ることもないプロエンターテイナーの最高の舞台であった。しかしそこ奇妙な風景があった。高く掲げられた携帯の林立であった。キャーキャー叫び声を出しながらビヨンセの舞台を写メしているわけだ。私はアリーナの立ち見席という一番乗りのいい場所をキープしていたのだが、携帯の林にはいささか興がそがれた。近くの娘の写メを覗いてみると、ぼんやりと何やら映っているだけだ。「どうするんだ、こんなもの!」

ビヨンセのLAでのライブをDVDで見たが、当然ながらカメラや携帯の影も形もない。観客は真剣にノリにノっている。全米プロゴルフでの観客はいいプレーをするととてつもなく大騒ぎするが、いざプレーヤーがプレーに入るとそれこそ日本語でいう「静寂の世界」になる。シャッター音など絶無である。

近年テレビをはじめとするマスコミによる大量情報のたれ流しの結果、アマチュアの耳ダンボ巨大化が始まった。その結果漫才人生しかなかった吾人が眉をひそめて政治論を打つ。ゴルフのスウィングもしたことがない婦人がハイヒールでゴルフ場を訪れる。ついにはTVで人気があるだけで総理になろうという「英雄」まで出てくる始末だ。これでは真の玄人は路地裏に潜むしかない。

一億総アマチュアの時代は何をもたらすか、当然ながら「玄人」「職人」「専門家」の喪失である。

そんな折ピューリッツァー賞を受けた「倒壊する巨塔」を読んで目が覚めた。9・11の悲劇の全貌を描いた作品だが、主人公であるオニールFBI捜査官がすごい。これぞプロ中のプロという活躍をする。まるでハードボイルドさながらの活躍を見せる。組織や規則は何のその、解明のためには時間や命を越えていく。9・11以前からアルカイダを追い、そして悲運にも当日世界貿易センター倒壊の犠牲になる。まさにプロの姿だ。日本にこんなプロはいるのだろうか。

役にも立たない写メを撮り、糞にもならない政治コメントで溢れる日本には、プロが出る幕もない。一億総国民がアマチュアであるかぎり、政治や経済さらには芸能、スポーツの分野に至るまで、日本では真のアクターが出てくる可能性は極めて絶望的だ。

 

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