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賢人の雑学:MUNIの段通

[賢人の雑学]

松山 猛の物見沢山

かくも面白き、カメラ道楽の道
松山 猛の物見沢山
 

今もし、生活に余裕が生まれたら、何が欲しいかと考えてみる。と言いながらも、このところの我が家の家計は、かつてないくらいの貧弱さであって、毎月を乗り切る工夫の方を先決せねばならず、あらためてこの間までの日本の生活が、驚くほど豊かなものだったのだと思い知らされる。だが嘆いていても仕方がない。だからこそ生活の向上を果たすために、働いて、働いて、新たなる余裕を生み出すために、仕事を楽しもうという気持ちを強く持たねばと思う。

そう、ここ数年の間、憧れ続けているものがある。それは「MUNI」の作る段通だ。中国段通の最盛期は明の時代で、素晴らしい作品が今も残されており、カーペットマニアの間でも、高嶺の花としてその評価は高い。

天津段通として商品化された近、現代のそれは、大きな工場で大量生産されるものが多く、実を言うと現地では、もはや伝統的な段通作りというものが、途絶えそうになっていたのだった。その消えそうになっていた伝統の灯を守るために立ち上がったのが、岡山県倉敷生まれの楠戸さんという人物だ。

彼は中国の甘粛省にアトリエと呼ぶべき工場をつくり、素晴らしい手作りの品を生み出している。現地の特産品である灘毛と呼ばれる羊の毛を、天然藍や漢方薬の素材である田黄などの染料で染め、丹精込めて織り上げたその段通は、スイスの検定機関から絨毯としては初めて、体に良い製品というお墨付きも得ることとなったのだそうだ。

倉敷市内と広島、東京の青山にショールームがあるから興味のある方はのぞかれるがよい。体に無害な段通は、見る者の心も豊かな気分にしてくれること請け合いだ。無地のものも良いが、中国の伝統柄をMUNI風にアレンジしたものも美しい物揃いである。

我が家の愛犬がその上を転げまわっても、遊びのついでに絨毯を舐めても無害だから安心できる。小さな赤ちゃんがいる家庭にももってこいの敷物なのである。

MUNI南青山本店
東京都港区南青山4‐1‐15 ベルテ南青山102
03‐5414‐1362

MUNI倉敷店
岡山県倉敷市東2‐4
086‐426‐6226

MUNI広島店
広島県広島市中区本通9‐12 2F
082‐545‐6162

筆者プロフィール

松山 猛さん

[エッセイスト] 松山 猛さん

1946年京都生まれ。
京都にてグラフィックデザイナーを経たのち、1967年『帰ってきたヨッパライ』の作詞家として一躍脚光を浴びる。
その後「ブルータス」などの編集者として、海外の食・時計・ファッションなど、生活を楽しみ、豊かにする人・モノ・文化を早くから日本に紹介し続け、現在エッセイストとして様々なメディアで活躍するかたわら、アメリカンエキスプレス・プラチナカード会員誌『デパーチャーズ』の編集長を務める。
『京の「粋場」歩き』『松山趣味』『松山猛の時計王2』『亜細亜道楽紀行』など著書多数。

 

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