賢人の雑学:台湾マンゴー・パラダイス
[賢人の雑学]
松山 猛の物見沢山 (2010.06.14)


我が家では、初夏の台湾からの季節の便りといえば、それは完熟のマンゴーと決まっている。あの、爽やかながら強い南国の香りと、口中に広がるねっとりとした甘みは、まさにパラダイスの味覚だ。
4月初め頃の新聞によると、今年の宮崎産マンゴーの初物が2個20万円という、途方もない値段で競り落とされたとある。初物食いを喜ぶ人はまだまだいるのだと驚いた。日本人は昔から、旬の走りの食べ物を、初物として珍重してきた。そしてそれが日本の食文化の、太い根っこの部分に今でもどっかり腰を据えている。春の山菜、筍、秋の松茸、そして白魚や初鰹など。
宮崎の「太陽の卵」も、台湾の「愛文」と呼ばれるマンゴーも、元は同じオーストラリア原産のアップルマンゴーだ。どちらも同じルーツを持つから、その味は兄弟のようにそっくりである。わずかに違うのは生産の仕方で、宮崎産はハウス栽培なのだが、台湾のそれは露地栽培であることくらい。
ここ数年はその台湾産マンゴーを、日頃お世話になっている方や友人たちに、季節の便り代わりに送ってきた。台湾で完熟直前の物を収穫して宅配便で送ることができるのだ。その新鮮な季節の味に喜んでいただけるから、こちらも嬉しくなる。
でもご心配なきように。ここだけの話だが、台湾産のそれはとてもリーズナブル・プライス。なぜなら圧倒的にその生産量が違うからだ。台湾南部の豊かな自然環境を生かして、広大なマンゴー畑で露地物として生産しているから、収穫量が多いらしいのだ。「台湾マンゴー親善大使」を自称するうちの奥さんが、どんな風にマンゴーが樹になっているかをこの目で見なくては、と言うので昨年はマンゴーの収穫期に台南県玉井鎮まで出かけてみた。
この玉井という街の周辺に、たくさんのマンゴー農家がある。そして玉井には、果物の輸出のために組合が作った検査所があり、日本政府の派遣した検査官が常駐して、検査を見守っている。ここで燻蒸による滅菌処理を施すそうだ。こうしておくと日本に輸入後、すぐに送り出せるというメリットがあるらしい。
台湾には、元々在来種の果実が小ぶりな、緑色のマンゴーもあり、こちらは台北などの都市でも、街路樹として植えられている。このマンゴーも酸味と甘みのバランスが良くて旨いのだが、アップルマンゴーのような派手さがないから、ブランド化ができないらしい。最も、あまりみんなに知られたくない秘密の味も残しておきたいからね。
台湾産マンゴーの輸入元 運盈(ウンエイ)商事
0476‐90‐6258(千葉県富里市)
筆者プロフィール

[エッセイスト] 松山 猛さん
京都にてグラフィックデザイナーを経たのち、1967年『帰ってきたヨッパライ』の作詞家として一躍脚光を浴びる。
その後「ブルータス」などの編集者として、海外の食・時計・ファッションなど、生活を楽しみ、豊かにする人・モノ・文化を早くから日本に紹介し続け、現在エッセイストとして様々なメディアで活躍するかたわら、アメリカンエキスプレス・プラチナカード会員誌『デパーチャーズ』の編集長を務める。
『京の「粋場」歩き』『松山趣味』『松山猛の時計王2』『亜細亜道楽紀行』など著書多数。
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